「オリパラ活動報告会」を開催しました!
東京2020オリンピック・パラリンピックにおいて、愛知県理学療法士会からも多くの会員が協力スタッフとして参加しました。
そのなかから7名の方に、オリパラ活動報告会(2022年3月21日Web開催)にて活動内容を報告してもらいました。
今回は、愛知医科大学病院 尾関圭子先生の報告をご紹介させていただきます。
報告:尾関 圭子 先生(愛知医科大学病院)
普段の業務について
院内業務として急性期の整形外科疾患を担当し、院外活動として主に野球のトレーナー活動やメディカルサポートを行っています。
推薦から派遣までの事前準備について
オリパラ委員会、PT協会からのE-learningや、オンデマンド配信から普段経験していない救急搬送や外傷の固定方法などを中心に繰り返し学習しました。
応急処置やテーピングの実践については同僚に協力してもらい練習しました。
活動時に必要となる英語については、元々日常会話レベルは可能でしたが、リスニングに不安を感じていたため、通勤時間を利用し半年以上は英語に耳馴染むようにした他、問診・施術については海外のYouTubeサイトを利用し、治療時の英会話を繰り返し予習しコミュニケーション場面に慣れるようにしました。
派遣場所と準備について
伊豆選手村に派遣となり、オリパラ委員会からは派遣先とシフトのみ提示されましたが、何の競技が開催されるかは明示されなかったため、自分で調べ準備を進める必要がありました。
派遣時期に開催されるのがマウンテンバイク(MTB)であることが分かり、そのルールや競技特性を調査し、選手年齢層が10代後半~40代後半と幅広いこと、外傷の好発部位は全身に至ること、障害としては膝関節が多いことなどから、どのような対応が必要となるかを事前に予測しました。
伊豆選手村での活動環境について
日替わりで医師が1名在中していましたが、その専門は救命科・内科・皮膚科・循環器科などであり、自分が派遣されていた期間には整形外科医がいない状況でした。
コメディカルはPT3名、鍼灸マッサージ師2名体制で、午前・午後の交代制シフトでした。
活動内容はどのようなことを行ったのか
伊豆選手村と宿泊地が1時間以上離れていたため、時間的に移動が大変でした。
10日間の派遣期間で対応した選手は1名でした。その選手は自国でのMTB練習中に転倒し右肩を強打、挙上困難および強い安静時痛と動作時痛を伴った状態で日本に入国し、選手村入村後すぐに診療所に来室されました。循環器の医師が対応し、上腕二頭筋長頭腱炎との診断のもと、アイシングと安静指導で選手とコーチを帰すところでした。しかし、PTとマッサージ師で急性期外傷に対して自分たちのできることを医師に提示しご理解いただき、選手の対応に当たれるようオーダーを出してもらいました。
初期対応時には肩関節自動屈曲が90°も困難な状況で、夜間痛も著明であったことから、就寝時のポジショニングを紙面化し提示し、また物理療法での炎症抑制や患部外からリラクセーションを実施しました。その後、選手は練習後にRICE処置、夕食後に治療を受けに毎日診療所に来室しました。炎症の沈静化に合わせ、cuff exなど漸増的に負荷をかけたメニューに改変しました。
この頃には自分のシフトが午前勤務となっていたため、練習前のテーピングを担当しました。ハンドル操作に不安がないよう15分と時間制約のある中、事前準備の上で実施しました。レース本番前もテーピングを実施し無事にレースを行うことができ、最終日には選手から“写真は一生残るから、一緒に撮ろう”と言っていただける関係性を築くことができました。
今回の活動で得られたことや今後の課題は何があるか
チーム協業で臨機応変に対応する経験は大きかったです。また、全国の多彩なスキル持った人との出会いが大きな財産となりました。
今後の課題としては競技会場で選手が怪我をした際に応急処置を行うことの経験不足や、テーピングに関しては固定だけではなく、ファンクショナルな動きやすいテーピングにも対応する必要性を感じました。
活動報告会を終えて
活動報告会では、長期にわたる事前準備から競技会場や選手村など普段は関わることの出来ない場で理学療法士としての活動など、他6名の先生方も含めて、日常の業務とは違った貴重な経験をされたことが大変伝わってきました。
2026年には愛知県でアジア競技大会が開催されます。県内各地域でプレ大会の開催や競技団体のキャンプ地となることも予想されます。今回の活動報告会を通じて、東京2020オリンピック・パラリンピック参加されたスタッフの経験と知識、報告会に参加された会員の方々の興味と意欲がアジア競技大会につながっていくことを感じました。